「絶対似合わないから行かない方がいいって！」

「にひきさんが…ないない 笑 」

「あそこはちょっと違うんじゃないかなぁ」

ずっとそんな風に言われていたキャンプ場がある。

確かに、どちらかと言えば

一部ネイチャリスト寄りを自認する我が家にとって

作り込まれた公園キャンプ場というのは

物足りなさが付きまとうだろうけれど

皆、口を揃えてないない尽くしだったせいもあって

その実、ものすごく興味深々だったのも事実。







聴くところによれば関東屈指の高規格キャンプ場であり

私達夫婦がこよなく愛する

あのフォレストパークあだたらを参考にして

着工されたキャンプ場だと昔から聞いていた。







それが初めての『大子広域公園オートキャンプ場グリンヴィラ』

実はここを目指すのっぴきならない事情があった。

と言うのも、東北人キャンパーであるからして

12月に入る前に例年ならば履き替えるスタッドレスなのだが

今年はチャンスを逃しっぱなしで未だノーマルタイヤという悲劇

こうなると普段は考えもしない事を人間頭に思い浮かべるわけで

多忙を極めるこの時期に絶対に候補になど

上がらないキャンプ地が頭に浮かぶ…

スタッドレス履いてれば(秋田)とことん山に行けたのに…

とか

スタッドレスさえ履いてれば(宮城川崎)るぽぽで雪中出来たのに…

などとこんな思考に陥ってしまうのだから

いつになっても始末におえない夫婦揃ったキャンプ馬鹿







「とことん行くなら3時間以上は覚悟だし」

「南に3時間ならノーマルタイヤでもかなりのとこまで行けるんじゃない？」

なーんて事になったとそういうわけ。

ところがたどり着くまでは苦難の連続だった。

常磐道から目指した道中は高萩インターから下道となり

Google Naviに弄ばれたかのような

極狭路でアップダウン激しいマイナールート

地元東北でも避けて通るような地獄道が続き

山間部を超え大子町グリンヴィラの看板が見えた時は

救われた気分だった。







日曜泊のグリンヴィラ…季節としては

決して混み合う時期ではないが

土曜泊はかなりのキャンパーが幕営していたようだ。

それでもフリーサイトはデイ延長でゆっくり撤収する組が数組

個別サイトはというと10組程度が見て取れた。







もちろん我が家はフリーサイト

この頃にはフリーサイトは我が家を含めたった2組で確定となった。

グリンヴィラはフリーサイトの出来が素晴らしい

そんな印象が同時に芽生える事に。

正面に堂々とそびえる欅の形の良さ

振り返ればこれまた形の良い金木犀







9月頃にもしここに張ったなら

芳醇な金木犀の香りに包まれる

素敵なキャンプができただろう。

自生樹木だらけの森はもちろん最高だが

植樹であってもこれほど素晴らしい樹々があるならば

コレらを眺めて過ごす

そんなキャンプテーマも成立すると思うに至った。







人のいない実に広大なフリーサイトにポツン

非電源キャンプをデフォルトにするというのは

こんな利点なんだなぁと思い知る。

我が家好みの贅沢キャンプはこうして始まった。







道中、いわき市勿来で仕入れた馬刺しとアンコウが

スターティングメニュー







個別サイトでは次々とやって来る

キャンパー達が設営の真っ最中だった。







ジョニーのハイボールとレモンサワーで乾杯







所々にハゲた場所もあるが

枯れ芝のフリーサイトはとても快適で

12月の殺人的な忙しさをしばし忘れ

心安らぐひと時の訪れ。







「グリンヴィラいいじゃない！」

温泉もある高規格、申し分なし。

そんな会話をしていると、数十メートル先の

お隣のサイトの…見たところ20代と思しきキャンパーが

炊事棟への往き来で申し訳なさそうに

チョコンと頭を下げてテント前を通って行く

こちらも「こんにちは」と声をかけるわけだが…

そりゃそうだ。

完全に後方の景色を捨て正面命の様に

我が家が設営しているわけだから

その真ん前を通り過ぎるのは気を使うのだろう

気を使わせない様にと話しかけてみると

どうやら見たこともない幕に関心があったよう。

「こんなの見たことないです…めっちゃ格好いいですね」

とお褒めの言葉

「ポール赤だし」

そ…そっち？笑







そんなやり取りが楽しいのがフリーサイト

他にも色んな人が遠目に我が家のサイトを

眺めては通り過ぎて行くのが見て取れた。







目が合えば「こんにちは」と頭を下げ

やべ話しかけられたという雰囲気で逃げて行く

得体の知れない幕でおこもりの様なキャンプになっているのは間違いなかった。

ただ、どこのどいつだというアウェイ感は感じない

それがフリーサイトの醍醐味であり楽しさでもある。




このキャンプ最大の楽しみは

『厚岸NEW BORN FOUNDATIONS 4』

2018年よりスタートした厚岸蒸留所のシリーズもの







ジムマーレーのウィスキーバイブルでは

ことごとく高得点を出し業界では知らない人はいない

それほどの地位を短期間で獲得したメイドインジャパン

僅か200mlの小さなボトルだが…

始まったばかりの蒸留所を応援する気持ちが必要な金額であり

ネットではシリーズ全部がプレミア価格となっている。



しかし…封切りはできなかった 汗

あまりの勿体なさに年越しまでその感動はペンディング

「あぁ…貧乏性って…」







極上の時の訪れ

「夕焼け凄くなってきたぞ！」

明日の雨は確定していたけれど

美しい夕景に心和むひと時が訪れた。







「俺、グリンヴィラ気に入ったかも」

妻に問うと

「真冬にまた来れるね」

期待通りの答えが返ってきた。







やっぱりこのフリーサイトが秀逸で

混み具合で大きく印象は変わるだろうけれど

管理棟やサニタリー棟までの距離感や

全体的にコンパクトな敷地内に

ギッシリと詰め込まれたキャンプ感が好印象だった。

そしてこの夕景には何か洗練された雰囲気を感じ

野営じゃないその雰囲気には何やら

居心地の良さのような物を感じるのだった。







日が暮れたタイミングのバスタイムも最高で貸切状態

全てが好転のキャンプに満足はひとしおだった。

サイトに戻ると、冷え込みはグッと厳しいものに変わり

自作の陣幕を設営し熱をタープ下に溜め込んでみる。







妻は売店でユニフレームのペグを購入



もともと１本だけ所持していたが

このペグが実に使いやすく7本追加となった。

ハンマーを使わず足で踏み刺すようなシチュエーションで

決して曲がらず確実に刺さってくれる。

使えば分かるが、短い方に限ってはステークペグ以上だと思う。







今宵の〆は茨城らしくアンコウ鍋と洒落込む







ラフロイグを楽しみながら

骨の髄までアンコウを食い尽くす。







キャンプでアンコウ鍋

まるでご褒美の様な旨さ。







キャンプの夜はアッと言う間に過ぎて行く。

楽しい時間だったからに違いない。

時間の感覚というのは若さに直結しているもの。







辛く苦しい思いをしている時間は実に長く感じるもの

例えば、ほんの1年半前、修行に選んだホテル時代は

たった2年の出来事だったのに10年くらいいた感覚がある。

一方で現在の仕事となり、まもなく同じ2年が

経過しようとしているけれど…体感的には

あっという間の出来事の様に感じる不思議。







コレって、実は体感時間こそがリアルという事で

楽しい時間を過ごしていると

そうではない人よりも歳をとらない実感がある。







つまり同級会に参加した時に古い友人と久々に再会し

アイツ歳とったなぁと感じるあの感覚

勘違いかも知れないが、妻は歳の割に実に若く見える。







私と同い年なのに…私の方が老けて見えるのは

妻が私よりも楽しい人生を歩んでいたせいだと思うのだ。

人生が楽しいと時間が短く感じるわけで

同じ時を過ごしていても悩み多き人は長い時間が経過していて

楽しい時間を過ごしている人は短かい時間しか経っていない

そう言えば分かるだろうか？

あながち間違っていない気がするのである。







だとすると…

楽しかったあっという間のグリンヴィラは

心身共に、若返ったキャンプ場という認定である。

ここに来るたびにそれを思い出そうと思う。


それがキャンプ




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