勤労は素晴らしい。

頭脳労働だけをしていた頃は欧米人の様に

人様が頑張って稼いだお金を転がすだとか運用するだとか

労せずして稼ぐ事ばかりを考えていたものだったけれど

そこから一転、自ら汗水流して働いてみると

その達成感は数字だけを追っていた日々とは

比べ物にならないほど大きく充実した毎日となった。

そもそも歴史的に勤労を美徳とするのが日本人であり

社会構造が現代の様な欧米式のものとなる以前は

頭脳労働なんて言葉はなく銭(ゼニ)は流通していたが

現代価値で100万円以上のそれが裸でその辺にポンと

置いてあっても盗む人すらいなかったという。

あくまでも主役である人様が作った『物』

それの代用品(ニセモノ)がお金というものだ。

銭そのものに価値などなかった時代は

勤労こそ美徳で「手に職をつけろ」と言われたもの。







今になってそれまでの生き方や時代に逆行するかの様に

その『手に職』なるものを手に入れてみると

充実感や達成感の違いに気付くのだから人生は面白い。

そういう意味では、その『手に職』を持つ人は

現代社会のヒエラルキーにおいては

典型的な労働者という立ち位置に他ならないが…

大成功を収めバイアウトし数十億数百億を手にした社長よりも

金融や土地転がしで儲けた大金持ちよりも

比べ物にならないくらいに尊敬している自分がいる。

もし、社会のシステムや根幹が揺らぎ

先史時代へと逆行してしまうくらいの

大災害や天変地異が起こったならば

彼らは世の中の頂点に立つ事になる。







そんな私の中の尊敬の的である『親方』は人情味に溢れ

義理堅いキャンプ好き。

若かりし頃はキャンツーで全国を旅したツワモノだったが

現在は奥様と二人キャンプを楽しむ我が家と同じスタイル。

年齢的には私の2コ上の先輩となる。


この記事で私に鉄管製のランタンハンガーをくれた

鉄管アーティストK君を介して知り合った。

爪先程の私の心遣いに感謝の意として

とあるものを作ってくれたわけである。







バーカンになぞらえたいつもの私の酒棚には

角度を変えて見える位置にソレが鎮座







「おおおおおチョーカッケー！！」

貸切りキャンプであるがため動物避けに衝動のままに叫んでみた。

それは鉄筋製のハンドアックスだった。







各部は溶接で作られている







一本作るのにHPが500ほど失われてしまうので

日に1〜2本が限度だと伺った。

親方の推定HPは2000(ちなみに私は1200である)







鉄を熱し、折り曲げデザインされた造作は素晴らしく







ヘッドの部分だけを見て

私はかの有名なSFホラーの主役エイリアンを連想した。

これはいわゆるペレイドリア現象であるとか

シミュラクラ現象というものに近いもの。

例えば、自動車のフロントデザインが顔に見える人は多いと思うが

人間はほかの動物同様、他の者を一瞬見るだけで、

その人が敵対的か協力的か、見知らぬ者か近親者か

を判断する能力を発達させてきた

ここには3点の逆三角形を見ると顔を連想するという

脳の働き(シミュラクラ現象)が起因しているのだが

太古の昔、先史時代から生死を分けた

重要な生存メカニズムの名残だとされている。

顔から重要な情報をつかもうとするのは

生来の習性、本能のなせる技と言われているのだが
参照：科学誌「ヒューマン・ネーチャー（Human Nature）」







こと、デザインにおいては何かに見えるというのは

生来の習性に働きかけるという事に直結し

記憶に残りやすいわけで車のフロントデザインなどは

ヘッドライト二つとグリル3点の逆三角形で

いかつさや可愛さを表現しているとも言われている。

そういう意味からこのハンドアックスは

実に秀逸だと思うのである。







無論、素材は鉄で溶接であるため無骨の中の無骨なのだが

その中に造作された曲線やヘッドの角度、鋭利さに

緻密で完成度の高いエレガンスを感じる私がいた。







漆黒の闇の中のキャンプにおいて

冷たい鉄色のハンドメイドハンドアックスが

美しく焚火に輝いていたのが印象的だった。







ヘッドが小さいので使いこなすには熟練が必要だが

杉薪ならば、手斧ならではの快感要素

一振り「パッカーーーン」が楽しめた。

親方！ありがとうございました！！




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