この日、あだたら高原には静寂と風の音が交互に感じられた。
林間のあだたらを吹く風は、木々のざわめきが教えてくれる。
その音たるや、航空機のジェットエンジンのごとく遠くの方から
くる!やって来る!
風のキャンプを経験したキャンパーならば誰しもが感じるあの恐怖感を伴う。
ただ、その暴力的な音量の割に、体感する風は木々に吸収され
力を削ぎ落とされた印象の…ただの風に変わって届いて来るから
この松林の懐深い防御力の恩恵はありがたい。
それでも、あの風の音を聴くと240ポールを入れたTATONKAに
マトモな風が吹いた時を想像してしまって、不安が頭から離れない。
幕を煽られ幕体ごと持って行かれる人も少なくないこの地、この時期、この風で
それでもオープンタープを堪能するという事のリスクバランスを考える必要があった。
取り急ぎ北西側となるポールを一本抜いた。
すると…
エントランスから奥へ奥へと末広がりの空間となり
タープの上方稜線は奥側ポールへと向かって柔らかな曲線を描きながらエンドを迎え
それはそれは美しく伸びやかな張り姿となった。
雪国張りと名付けた切妻片流れの段違い張りだが、美しさも段違いとは新たな発見だった。
おしゃれキャンプなど意識しなくなって幾久しいが
こんな瞬間に充実感を得るのは、未だ新鮮な喜びだと思う。
いつも夫婦二人でキャンプがデフォルトの我が家の場合
二人にとっての居心地は最重要
キャンプなんて、テントひと張りで飯食って酒飲んで寝て終わりでいいじゃん!
…ではおしゃれキャンパーを目指す妻のお許しはもらえないのがツネなのだ。
我が家がイメージするところは
アラブの王様さながらにテントとファニチャーと料理人と召使いを
引き連れて、砂漠のど真ん中豪華絢爛な野営をするアレ…グランピング
そこに我が家の解釈を存分に取り入れたプチワイルドキャンプならば申し分ない。
それは自己肯定感と満足が満ち溢れ
気分も上々の中でこの上ない非日常感を満喫するキャンプとでも言おうか…
結果として実践してきたのは
生き物と言えばタヌキやクマぐらいしかいない山奥で彼等を僕(しもべ)に見立て
ジャーーーーンとド派手に幕営し王様を気取るというようなものなのだが 笑
つまり…
こういう絵ヅラや
こういうシチュエーションにあえてドカドカと荷物を持ち込み
オートキャンプ場さながらの快適キャンプをやっちまおうぜってな話である。
見せるため飾るための装備ではなく全ての道具に根拠と機能と意味があり
極上の酒と極上の時間を身を以て体験すること尽きる。
そんなわけで、1年前に手に入れたフレンチビンテージ
CABANON NEPTUNE 3 は実にいい仕事をしてくれた。
こいつ一枚とTATONKAを張れば、それはまるで
持ち運び出来る別荘の様な感覚
こんなキャンプを繰り返しているうちに
おいそれと次の幕…そんな気分にならなくなった夫婦二人。
望んでいた幕営が出来、満足が不満足を超越している状態で次という頭は出てこないのは当たり前。
ところが…
満足に浸ること1年が過ぎ、あらゆる道具が疲れくたびれ悲鳴をあげる。
形あるものは壊れてしまうのは仕方ないことだが、酷使し過ぎた感は否めない。
定期的なメンテは欠かさなかったが、ゴム部品の劣化やジッパーなどに
経年劣化が見て取れて、こりゃぁちょっと休暇を与えなければ可哀想な状態。
それより何より
風 である。
風にめっぽう強い鉄骨の端くれCABANONだが、次に大風に遭えば
劣化したゴムはちぎれてしまうだろうし、TATONKAに至っては未だ破れたまんまで
雪国張りしか出来なくなった 笑
靴だって一足を長く履けばスグ駄目になるが
ローテーションを組む事で寿命を延ばす事が出来る。
かくして…新幕導入という話
TATONKAなしの幕だけで
納得の行くサイトを構築することは出来るのか?
前置きだけで今回はおしまい!
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