キャンプの印象をガラリと変えた心震わせる景色 北海道キャンプ旅 act 6
こんな景色が観たかった。
テントサイトにストレートに吹き付ける
湖面を疾走する南風をモロに受けてはいるが
この風もそのうち止む。
サイトの目の前には干上がった川
昨夜の雨が作り出したもの。
つまりは今夜、もし昨晩の様な大雨に見舞われたとしても
雨水はこの川を流れ支笏湖に達する事になる。
そんな希望的観測を胸にここを選ぶこととした。
連休キャンプとしては実質最後の一日が始まった。
明日には全撤収し札幌へ向かう。
あっという間の四日間
最終日は後悔なき一日というのが
夫婦二人の共通認識である。
朝食後、管理棟にあるシャワーとランドリーを借りようか
そんなタイミングで遭遇したのは
管理棟前に現れた蝦夷鹿の親子だった。
これまで野生の鹿はニホンカモシカを数回見た程度
バンビの様な夏毛の仔鹿の可愛さは妻のハートを
鷲掴みにしたようだった。
近年、蝦夷鹿を取り巻くニュースはネガティブ一色ではあるが
北海道に来て四つ足の野生動物を見たのは
これが初めてで記憶に残る嬉しい出来事の一つとなった。
15分程草を食べ続け
そのうちどこかに消えていった。
この後、妻はシャワーへ
私はと言えば、雨も上がり場内の水気もほぼ引いたため
歌才オートキャンプ場でずぶ濡れた
タープの乾燥を行う。
天気はと言えば、日中は雲の切れ間もあるようだが
夜には再びの雨
明日は雨撤収確定の予報だった。
大きな葉の下にしっかりと捕まるオニヤンマ
特徴的な木肌の木々を眺めながら
妻に今朝方の気持ちを伝える事にした。
湖畔に引越しも悪くないんじゃないか…と。
雨中完璧だったこのサイトも
前方に人がやってくればロケーションも悪くなる。
妻も考える事は同じだった。
そんな矢先にサイト正面に湖を塞ぐように複数台の車が止まった。
「よし!引っ越そう!」
妻の掛け声と共に(連休キャンプ恒例の)場内引越しを決意した。
引越し完了後、元いたサイトを改めて眺めた。
なるほど確かに石と木々に囲まれ
万全の守られ感がある隙間サイト
ガラ空きのキャンプ場内からよくここを選んだものだと
感心してしまった。
大方の荷物の移動と設営が完了
この瞬間200%のロケーションアップを実感
この変化はたまらなかった。
遠景で観る湖は荘厳にして雄大に感じたものだったけれど
眼前に打ち寄せる風と波の臨場感が凄まじい。
このキャンプ場の印象が大きく変わった瞬間だ。
自然の木々に囲まれた長閑なキャンプ場は
大迫力の『THE LAKESIDE』へと変貌。
もしかすると荒天後の荒れ狂う水面が
逆に良かったのかも知れない。
波音一つなかった昨日までの湖面とはうって変わり
大きな音を立てて荒波が押し寄せている。
これはほとんど海だった。
ただ違うのは湖であるがゆえ
風に一切のベタつきがなく心地よい事。
「あぁ〜引越ししてホント良かったかも…」
思わず漏れた感想が全てを物語る。
林間にあったサイトは十分に快適だったし
想定を超えた雨に驚くべき耐性を示してくれた。
もちろん昨夜はそれが必須条件だったのは間違いない。
ただ湖畔のサイト
湖畔ギリギリに張らずして最大の満足は得られないのが我が家。
かつて観た景色を超えてくれなければ納得はないもの。
そういう意味でいうと静寂な湖面ではなく
荒波のコレを間近に体験する事に
醍醐味を感じている自分に気付く。
北海道に来て思ったことがいくつかあるのだが
私たちは色んな景色を見過ぎてきた。
実は東北で得る満足も道南でのソレもふもとっぱらでも
恐らく全て同じものなのかも知れない。
全ては己れの感受性と立ち位置一つなのだ…という気付き。
初めて観る景色には心を震わせる感動があるが
気付くか気付かないか感じるか感じないかで
その印象が大きく変わるものも多い。
眼で見る景色、耳で聴く音、肌で感じる風
頭で作る先入観とそこにいる人達。
その全てが一体となってその営地の印象を作るわけで
『名所に来たから感動した』ではなく
『この日、この時間に、この人とここに来て
この景色とあの風とあの鳥の囀りがあったから』
加えて言えば
『これを食べ、あれを飲み、とにかく楽しかった』
を含めて感動なのだ。
20歳の時、地球のヘソと呼ばれる
エアーズロックに登頂した時を思い出した。
見渡す限りの360°の地平線
雲一つない青空、乾いた空気と足に残る疲労感。
そして単独であったがゆえの孤独感も合わせ
人生でコレを超える感動は
向こう10年ないだろうと思ったものだった。
それが足枷となったのだろう
確かにその後の10年
エアーズロック登頂のアレを超える感動は
私の人生に現れなかった。
だが、月日が経ちそれからさらに十数年を要して
それを超える感動に出会うことになる。
それがキャンプ
つまりはコイツにどっぷり浸かっている限り私達は
きっと毎年、一定時期には感動のアップデートが行われ
その都度思うことになる。
ここは最高だ…と。
美笛キャンプ場において最上級の景色である
鏡面となった湖面を照らしながら
昇る朝日が見れなくてもいい
その理由はさもありなん
ここは最高だとひと時でもこの場所で思えたから
それがキャンプ
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