八幡平と言えば、若かりし頃はパウダースノー目当てに通ったものだった。

時は90年代スキーブーム

冬ともなればキャリアを積んだ赤いクーペで山を目指して高速に乗った。

八幡平インターを下りると程なくして圧雪路

向かう先は当時この世で最もオシャレだった安比高原

右手でドアを半開きにして右足を降ろす。

足をツルツルの路面に着いた状態で前後に動かし決まってこう言う。

「凍ってるね」

足を戻しドアを閉めアクセルを踏む。

4WDじゃなかった私の赤いクーペは2、3度空転してから

凍った路面を掴み、あの映画よりもちょっとだけ格好悪く

ゆっくり慎重に走り出す…四駆だったらなぁ…







あれから四半世紀が経ち…

赤いセリカ リトラクタブルヘッドライトの4WDになんて

1mmの興味すらなくなってしまった私は

当時知る由もなかった一つの提灯に胸をときめかせていた。



からのつづき







2日目朝がやって来た。







久々のキャンプ和朝食







フランス製鋳鉄鍋STAUBで炊いたササニシキには蟹穴があった。

今日の予報は雨

朝のコーヒーを飲み終わった頃、岩手山には

グレーの雲がかかり、予報通りの雨が降ってきた。







GW後半キャンプ2日目にして雨天

この不幸を幸福に変えるためには行動するしかない。

非日常感をその行動で得ることがセオリーだ。

このエリアの非日常と言えば…温泉一択に違いない。

ハンドルを握って10分程で最初のそれは現れた。







八幡平ロイヤルホテル前の白樺並木

今時期は桜並木と向かい合う白樺並木というビッグボーナス

思わずブレーキを踏んだ。

この時点で雨天を恨む気持ちがなくなった。

こんな景色を眼前に、幸も不幸もありゃしない

空の色を気にするほどの神経質さは持ち合わせていなかった。

桜と白樺のこのストレートを抜けると山道になり

何箇所もの水芭蕉の群生地を横目に辿り着いたのは松楓荘。







歳をとると（人によっては歳をとらなくても）

恐ろしく鄙（ひな）びた風情の塊のような雰囲気に本物を感じるものだ。







長い長い廊下のその先にこの日最上の癒しはあった。







内風呂とは思えない強烈なヴィジュアル

THE 秘湯 ！







青みがかった乳白色の硫黄泉で露天風呂は混浴だった。







これを秘湯と呼ばず何と言おう（硫黄）

歳をとると次々に頭に浮かんでくるダジャレを

ついつい口に出しては周りを唖然とさせてしまう。

私の場合は唖然どころか ガン無視 されるのがお約束となった。

それにつけてもこの湯の非日常感たるや凄まじく

全てを忘れさせてくれるリラックスを頂いた。







サイトに戻り昼食を







絶品コシアブラのペペロンチーノを食べ終わる頃

雨は小康状態となり、やがて止んだ。







さぁやっと今回キャンプのメインイベントのスタートだ。

キャンプ場を囲む雑木林に足を踏み入れた。







あった！







ここにも！







大漁だった。







言葉にできないほどの濃密な時間







今回初参加だったＳさんはタープ下 焚火をこう語った。

「（ブログを観て）絶対そんなの嘘だと思ってましたが

こんなに暖かいものなんですね」







そりゃそうだ。

ブログで見るのと実際にヤルのでは全く別物に違いない。

目の前でそれが起こり

温度や匂いや煙たさを体感して初めて実感がある。


それがキャンプ


Ｓさんがその温もりを再現する日は、きっと遠くない。







到着時、ほぼ満開に近い状態だった桜は

花散らしの雨に打たれ、その後、荒れる風に吹かれ

それはそれは見事な花吹雪の舞を披露

いつしか葉を伸ばし始めていた。

それは…

妻の神広場で過ごした濃密な時間の経過を知らせるかのように。













かくして八幡平エリアを満喫する二泊三日が終了する。







片付けをし始めたその瞬間から雨漏りレベルの雨に打たれた。

「もうちょっとゆっくりしておいで」

岩手山がそう語っているかのような雨







無論、不快感はなくパリッと乾くまで時間はかからなかった。

幕についた桜の花びらを洗い流してくれたわけだ。







笑顔の別れ

仲間の目は既に次のキャンプを見ていた。







八幡平インター近くのコンビニによると

変顔のニホンカモシカが…さよならを言いに来た。







ほら、なんか変顔 笑


これが我が家のGW二泊三日八幡平キャンプの顚末。

東北に素晴らしいキャンプ場は数あれど

楽しいかった思い出と共に生涯心に残るキャンプ場は数少ない。

そんな八幡平 妻の神広場キャンプ場にありがとう。





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