コンディションの良さそうな週末がついにやって来た。






一週間近くあか抜けない予報から一転、土日は山岳地帯も天気が持ちそうとの予報。

このチャンス … 逃すわけには行かない。


ところが人生そうそう上手くは行かないものだ。
妻の親戚に不幸があり、顔を出した後の出撃となった。
いた仕方なく、会社は午前中でドロップアウト
その足で、親戚宅経由で現地へと急ぐ。






荷物は前の晩に積み込みを終えていた。
好きな事に没頭出来ると分かってからドキドキが止まらないのは、昔も今も変わらない。


若かりし頃、平日土日関係なくスキーにハマった時期があった。
凝り性な私は多い時で年間35回の出撃が数年続いた。
仕事をしながらだったので毎日ナイター終了までの2時間だけ
という薄い内容も含めて、充実していた。
冬は毎日天気とにらめっこ。



歳を重ねると、当時、一緒に山に通っていた仲間も散り散りとなり、いつしか私は腰痛持ちになっていた。


ヘルニア持ちにとって、雪山ほど過酷な試練はない。


腰部をかばうと身体のあちこちからも必ず痛みとなってクレームで返ってくる。


それでも、コンディションの悪くない雪中キャンプが出来るなら…全てを投げ出してコルセットを巻いてでも山に足を運びたかった。


それがキャンプ



秋田県湯沢市
今や全国区の名産品、稲庭うどん、いぶりがっこ
秋田を代表する名産のうち二つを生み出した地域
私が住む宮城県とは隣接しており、仙台から最も近い秋田






今回はそこにある、とことん山キャンプ場。


国内有数の豪雪地帯というイメージがあるが、それこそさすがの豪雪地帯。
除雪行政のクオリティが実に高い。






こんな山奥まで…そう思える場所もキッチリ除雪が行き届きガードレールがあれば、そのギリギリのキワまでキッチリ雪がどけられているのには驚くばかり。





方や、仙台市内などは、とある政党の仕分けのお陰で随分と手抜き感漂う除雪事情に近年ご立腹の貴兄は多い。






そんな好条件の中、ついつい飛ばし過ぎてしまう。
良路をカッ飛び、難なく目的地へと辿り着いた。


そこには今回のキャンプの発案者kimutimu39君が待っていた。


予想通りの雪の量に茫然とする妻だったが、温泉にいつでも、何度でも入浴出来るというアドバンテージを思い出させて気力を湧き立たせた。


我が家は私よりも妻の方が実によく働く。


彼女のモチベーションは決して下げてはならない。
これが私のキャンプにとって、重要な事、この上ないマイルール。


ざっと見たところ、通路だけは除雪してあり、サイトは私の身長ほどの位置まで雪が積もっていた。





雪の壁が幾重にも層を重ね、白く美しい回廊となっている。




先発隊のkimutimu39君からのアドバイス、私たちの雪中キャンプ経験では初となる雪の階段作りからスタートした。


雪はそこそこの粉雪。


水分は少な目だが、固まらないほどのサラサラでもない。
しかし階段にするには、粉雪過ぎて何度も何度も崩れては補修を要し出来栄えはひどかった。



本当にひどいな


夫婦で悩んだ挙句、宴会幕は必要だろうという選択で今回もトルテュライトを持参。


間口3600mm　全長5800mm　大型と言える幕をこの場所に張るのは相当しんどい事は分かっていたが、少人数の宴会には持って来いの使い勝手は捨てがたい。金と体力は使い切っても

思い出は楽しいモノを持ち帰るのが我が家のルール。


テント総床面積は約20平米


これを雪固めするのは、とてつもなくシンドイ。
しかもスノーシューを持参しているわけでもないので、足で雪を踏み固め地道に床を作る。
kimutimu39君からは多大なご助力を頂戴する基礎作り。



階段側から奥へ奥へ踏み固めていく。
途中何度も足はズッポリと雪に刺さり地面に大穴を開ける。


それを埋める。

整地する。





ぐあぁああぁシンドイ。


しまいにスキーウェアのまま転がり出すkimutimu39君と妻。


雪とたわむれているのか、作業をしているのか…いずれにせよ、「仕事は楽しく愉快に」これも我が家のルール。


あらかじめ手運びしたテント一式を手際よく広げ設営に取りかかったのは
雪と格闘しはじめてから1時間後くらいだっただろうか…。
kimutimu39君からは多大な援助を頂いた。
若さというのは何より頼もしい。心からなる感謝の念。ありがとう。



40年代生まれの私達夫婦の体力はたかが知れている。


当然、ここからが本当の地獄の始まり。



駐車場から、サイトまでは登り斜面の圧雪状態。


荷物はソリに積込みひたすら引いて歩く。


この辛さ…分かっていたからこそ、荷物は通常時から20％程度減らしたのだが…。


最初のソリ運びで最もキツイ駐車場からゲレンデまでの坂を登りきる途中、アルパカが燃料満タンにもかかわらず、ソリから脱落。

転がる転がる！

追いかけた時、左膝の横側に負担がかかり痛めてしまう、片足を引きずりながらの荷運びとなった。



日はとっくに暮れている。






早く明かりの準備をしなければならない。


足が痛いと妻に告げ(仙台ではタレカという人種)、交代を請う。
私はインナー準備とランタンの着火準備をする。
妻はやはり頼もしい。




「しまった」




プレヒート用のアルコールボトルがまだ車の中だ…。



ランタンケースにはプレヒートカップにアルコールを注ぐための小さい鶴口の容器だけ、アルコールは５㎜程度残っていた。

これでいけるかどうか…炎上覚悟でプレヒートを開始した。



この瞬間がいつも美しい


無事、着火成功。
あらためてヴェイパラックスの躾の良さを実感する。




その後の氷点下の雪山


白い息を吐きちらし、汗だくになり、時折、膝をさすりながら、ただただソリを引き


結局、設営を始めて荷物を全て運び入れ、寝床までパーフェクトに整った時には20時を回っていた。


すっかりその頃には身体は冷え切っていた。





食事は後にして先ずは体を温めに風呂へ行く。

身体の中からも獺祭で暖めた結果、見事にのぼせた。




まるで罰ゲームのような荷運びも終わり、１時間以上の入浴も終えて一日目の宴会が始まった。






明日は元を取らなきゃ…いいや、必ず取れる秘策があった。

いいキャンプになりそうだ。







そして




除雪車の音と共に、キーンと冷えた朝を迎えた。






つづく



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